こどもの滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは?
滲出性中耳炎とは鼓膜の奥の中耳に滲出液が貯まった状態をさします。
滲出性中耳炎の原因
耳は大きく外耳、中耳、内耳に分けられます。耳の奥にある鼓膜の内側には空気が入った中耳とよばれる空間があり、耳管という管で鼻とつながっています鼻の奥の炎症(風邪など)・アデノイドや扁桃の増殖により、耳管と呼ばれる空気交換の管が潰されて、滲出性中耳炎が発生することが多いです。滲出液に感染が起きなければ、あまり痛みを伴いません。
こどもの耳管はおとなの耳管よりも角度がなだらかなので
滲出性中耳炎になりやすい
正常な中耳
滲出性中耳炎の中耳
滲出性中耳炎の症状
無症状の場合もある
特に自覚症状はなくて「いつの間にかなっていた」「耳鼻科で診てもらったら、たまたまみつかった」というのが結構あります。
耳閉感
中耳に液体がたまると、耳がふさがった感じ、耳鳴り、などの症状としてあらわれることもあります。症状を表現できない小さなお子さんの場合は、耳を頻繁に触ったりするようになります。
難聴
中耳にたまった液体によって鼓膜の振動が悪くなり、音が十分に伝わらなくなるため、聞こえが悪くなります。聞き返しが多い、小さな声で呼びかけても反応しない、テレビの音が大きくなるなどにより周囲から気づかれることが多いです。軽度ですが難聴になると問題です。特に就学前のお子さんでは、まだ十分には字を読むことができませんから、聴力を確保できるかどうかは脳やことばの発達に影響します。
滲出性中耳炎の検査
鼓膜所見
滲出性中耳炎の診断には、鼓膜の観察が最も重要です。耳鏡という小さな器具を医師が耳の穴にそっと入れて指でやさしく支え、そこに光を当てて、鼓膜を確認します。急に動くと、器具で外耳道を不意に傷つけてしまうことがあって危ないので、動いてしまう赤ちゃんやお子さんの場合は、お子さんの体や手足を保護者様の手とスタッフの手でしっかり固定していただきます。当院では、顕微鏡で見ながら光を当てて診察をし、場合によってはファイバーカメラを使って耳の中の写真をとってお見せすることができます。また、耳垢がたまっていて鼓膜が見えない場合もあり、その場合は、耳垢除去を行います。
↓滲出性中耳炎の鼓膜がどのように見えるのか、ファイバーカメラの写真を示しています。
これらの写真以外にも、鼓膜の石灰化・菲薄化・癒着・air-fluid level・bubble など、滲出性中耳炎の程度により、様々な所見になります。
これらの写真以外にも、鼓膜の石灰化・菲薄化・癒着・air-fluid level・bubble など、滲出性中耳炎の程度により、様々な所見になります。
正常な鼓膜は透き通った灰色です
滲出性中耳炎では鼓膜の色に透明感がなくなり
中耳の液体の色がみえます
液体貯留が続くと
鼓膜の位置が奥に引っ込んできます
標準純音聴力検査
標準純音聴力検査は音が聞こえたらボタンを押す検査です。骨を通して聞こえる音(骨導聴力)と耳の穴を通して聞こえる音(気導聴力)の二つを測定します。ヘッドフォンをつけて、音が聞こえたら手を挙げて、音が聞こえなくなったら手を下げる、ということが、5分間くらい、飽きずにできれば、お子さんでも検査が可能です。
ティンパノメトリー
耳の穴に、検査用の耳栓を入れて、軽度の圧をかけ、鼓膜の動きが良いかどうかをみる検査です。鼓膜の動きがグラフで表されます。耳の穴に、検査用の耳栓を入れることができれば、赤ちゃんでも検査可能です。(耳栓を嫌がって外してしまう場合は残念ながら検査できません)
正常では山のかたちのグラフができており
鼓膜が良く動いています
滲出性中耳炎では平坦なグラフになり
鼓膜の動きが悪くなっています
滲出性中耳炎の治療方法
『小児滲出性ガイドライン』に沿って治療を行います。小児の滲出性中耳炎は、難聴や鼓膜の高度な変化がなければ、発症から3か月は様子を見ることが勧められています。3か月以上経過しても、無症状であれば経過観察のみになることもあります。
内服薬
よく使われるのは、去痰剤です。また、滲出性中耳炎では鼻副鼻腔炎や繰り返す風邪が原因の大多数ですので、鼻の治療はとても重要です。アレルギー性鼻炎や鼻副鼻腔炎がある場合は、同時に治療します。鼻炎に対しては抗アレルギー薬・鼻噴霧ステロイド、副鼻腔炎に対してはマクロライド系抗菌薬を使用する場合もあります。
手術(鼓膜換気チューブ留置術、アデノイド切除術)
鼓膜換気チューブ留置術
3か月以上経過しても自然に治らず、難聴が実際にある、ことばが遅れているという状態があると、手術をしてチューブをはめ込んででも聴力を改善させることが検討されます。手術は鼓膜換気チューブ留置術という手術で、鼓膜に小さな切開をして、チューブを留置します。チューブを入れることによって、中耳にたまっている液体を出しやすくして炎症を抑え、かつ、良く聞こえるようにすることができます。鼓膜の病的な変化を予防する効果もあります。ただ、その後、鼓膜が固くなったり、穴が残る、耳だれが出る、感染するなどの問題が起こることもありますので、チューブ留置後も定期的な通院が必要になります。この手術は、小児の場合は安静が保てないため、多くの施設では全身麻酔で行われます。手術の必要があれば、総合病院に紹介させていただきます。
3か月以上経過しても自然に治らず、難聴が実際にある、ことばが遅れているという状態があると、手術をしてチューブをはめ込んででも聴力を改善させることが検討されます。手術は鼓膜換気チューブ留置術という手術で、鼓膜に小さな切開をして、チューブを留置します。チューブを入れることによって、中耳にたまっている液体を出しやすくして炎症を抑え、かつ、良く聞こえるようにすることができます。鼓膜の病的な変化を予防する効果もあります。ただ、その後、鼓膜が固くなったり、穴が残る、耳だれが出る、感染するなどの問題が起こることもありますので、チューブ留置後も定期的な通院が必要になります。この手術は、小児の場合は安静が保てないため、多くの施設では全身麻酔で行われます。手術の必要があれば、総合病院に紹介させていただきます。
アデノイド切除術
アデノイドは鼻の奥に存在する扁桃腺のような組織のことです。アデノイドのすぐそばに、耳管(耳と鼻をつないでいる管)の出口があるため、アデノイドが大きいと耳管がふさがれてしまい、滲出性中耳炎になりやすく、また治りにくくなります。アデノイドが明らかに大きい場合は、アデノイドを切除術が検討されます。全身麻酔で行われます。手術の必要があれば、総合病院に紹介させていただきます。
アデノイドは鼻の奥に存在する扁桃腺のような組織のことです。アデノイドのすぐそばに、耳管(耳と鼻をつないでいる管)の出口があるため、アデノイドが大きいと耳管がふさがれてしまい、滲出性中耳炎になりやすく、また治りにくくなります。アデノイドが明らかに大きい場合は、アデノイドを切除術が検討されます。全身麻酔で行われます。手術の必要があれば、総合病院に紹介させていただきます。
滲出性中耳炎の予防について
お子さんが滲出性中耳炎にかかりやすくなるきっかけとして、かぜ、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などがあります。病院に通院することはもちろんですが、家庭で鼻みずを吸ってあげることもとても重要なことです。
おしゃぶりの使用はあまりよくありません。おしゃぶりを続けることで、のどや鼻の空間に陰圧を生じ、そのことが耳と鼻をつなぐ「耳管」の機能に悪影響を与えることが原因とされています。
タバコは みみ はな のどの免疫力を低下させます。タバコの煙だけではなく、喫煙者の吐いた息にも有害物質が含まれています。まわりの人はタバコをやめましょう。電子タバコも有害ですのでやめましょう。
おしゃぶりの使用はあまりよくありません。おしゃぶりを続けることで、のどや鼻の空間に陰圧を生じ、そのことが耳と鼻をつなぐ「耳管」の機能に悪影響を与えることが原因とされています。
タバコは みみ はな のどの免疫力を低下させます。タバコの煙だけではなく、喫煙者の吐いた息にも有害物質が含まれています。まわりの人はタバコをやめましょう。電子タバコも有害ですのでやめましょう。
Q.滲出性中耳炎の時にプールに入っていい?
耳や鼻の病気がある時に水泳をすることはあまりよいものではありません。水に潜った時に鼻水が耳管に入ってしまったり、水泳中に鼻をかめなくて鼻水が鼻の奥にたまってしまったりして中耳炎が悪化する原因になります。
そうはいっても、夏場にプール遊びを楽しめないとか、スイミングで水泳を頑張りたいのに頑張れないのは、つらいものがあるでしょう。滲出性中耳炎の病状や、プール遊びや水泳の程度によっては、許可できることもありますので、受診時に個別にご相談ください。
耳に水が入ってしまうこと自体は、中耳炎とは全く関係ないため悪影響はありません。あくまで鼻が悪いかどうかが問題なのです。
そうはいっても、夏場にプール遊びを楽しめないとか、スイミングで水泳を頑張りたいのに頑張れないのは、つらいものがあるでしょう。滲出性中耳炎の病状や、プール遊びや水泳の程度によっては、許可できることもありますので、受診時に個別にご相談ください。
耳に水が入ってしまうこと自体は、中耳炎とは全く関係ないため悪影響はありません。あくまで鼻が悪いかどうかが問題なのです。