航空性中耳炎
はじめに
飛行機の上昇や下降時、気圧の変化により耳に不快感や痛みを感じたことはありませんか？これは航空性中耳炎という症状で、多くの人々が経験しています。この記事では、航空性中耳炎の原理から治療法、予防方法までを詳しく解説します。
航空性中耳炎の原理
航空性中耳炎の主な原因は、飛行機の気圧の変化に耳が適応できないことです。平地での気圧が１気圧とすると、だいたい高度１万メートルの飛行機内は0.8気圧になります。富士山5合目と同じくらいの気圧です。離陸時と着陸時に、このような気圧の変化が15-30分くらいの間に起こります。
離陸時
離陸時は気圧の低下によって中耳の空気が膨らみ、鼓膜が内側から外側に押されることになります（膨らみます）。放っておくと痛みが出ることになりますが、通常は飲み込んだり口を大きく開けたり閉じたりすることで、耳管が開くので症状は改善します。しかし、もともと耳管の機能が弱いかたや、風邪やアレルギーで鼻炎などの症状で、耳管の出口がはれてふさがっている場合は、この空気の排出がうまくできずに耳が痛くなります。
着陸時
実は着陸時の方が注意が必要です。着陸時はプールで2メートルくらい潜った時と同じくらいの気圧変化を受けます。
中耳の空気が縮んで、鼓膜は内側に引き込まれます（陰圧がかかります）。離陸時と同様、耳管が開けば改善するわけですが、耳管のはたらきが悪いとうまくいきません。中耳に陰圧がかかった状態が続くと、鼓膜や中耳内の粘膜に炎症が起こり、中耳炎を発症します。これが航空性中耳炎です。
中耳の空気が縮んで、鼓膜は内側に引き込まれます（陰圧がかかります）。離陸時と同様、耳管が開けば改善するわけですが、耳管のはたらきが悪いとうまくいきません。中耳に陰圧がかかった状態が続くと、鼓膜や中耳内の粘膜に炎症が起こり、中耳炎を発症します。これが航空性中耳炎です。
症状と診断
主な症状
年齢を問わず乳幼児、高齢者でも生じ得ます。一般的に乳幼児は自覚症状に乏しいです。
このような症状が飛行機の離着陸をきっかけにおこり、飛行機を降りてからも続く場合は、航空性中耳炎を疑います。
- 耳の痛み
- 耳が詰まる
- 耳鳴りがする
- きこえにくい
- めまい（まれ）
このような症状が飛行機の離着陸をきっかけにおこり、飛行機を降りてからも続く場合は、航空性中耳炎を疑います。
鼓膜のようす
航空性中耳炎の診断は、発症するまでの経過と鼓膜所見で診断できます。
鼓膜所見は凹んでいることがほとんどです。（陰圧がかかることが発症原因であるため）
中耳に液体や血液などがたまっているのが見えることもあります。
鼓膜所見は凹んでいることがほとんどです。（陰圧がかかることが発症原因であるため）
中耳に液体や血液などがたまっているのが見えることもあります。
航空性中耳炎の鼓膜所見
航空性中耳炎になりやすい人
耳管機能が悪い人は航空性中耳炎になりやすいです。
・風邪や花粉症、アレルギー性鼻炎などで鼻の調子が悪いかた
・幼少期から鼻が悪く、中耳炎を繰り返していたかた
このようなかたは航空性中耳炎のリスクが高いと言えます。
・風邪や花粉症、アレルギー性鼻炎などで鼻の調子が悪いかた
・幼少期から鼻が悪く、中耳炎を繰り返していたかた
このようなかたは航空性中耳炎のリスクが高いと言えます。
航空性中耳炎の予防
飛行機に乗ると耳が痛くなるというかたは、あらかじめ準備をしておくことも、航空性中耳炎の予防に有効です。
搭乗前
飛行中
離陸・着陸時にはあくびや口を大きく開ける動作、つばを飲み込む動作を繰り返すことで、気圧の変化による耳の不快感を軽減することができます。お酒を飲むと、耳管周囲の粘膜がむくみやすくなるため、飛行機に乗って耳が痛くなりやすい方は、飛行機搭乗前や飛行中にお酒を飲むことはなるべく避けることをおすすめします。
その他
飛行機は気圧調整(与圧)をしてはいますが、地上と同じではありません。ボーイングやエアバスの最新鋭の飛行機では、標高1800ｍくらいの山と同じくらいの気圧に調整されているようですので、あまりにも繰り返すかたはそういった機体選びも検討してもよいでしょう。
搭乗前
- 航空性中耳炎は鼻の調子が悪いとなりやすいため、飛行機に乗る前や搭乗中に、点鼻薬を使用して一時的に鼻腔の通りを良くしておきます。
- 漢方薬の「五苓散」を2包直前に内服することが有効な場合があります。
- イヤープレーンを装着することで予防できる方もいます。安価なので、繰り返す方は試してもよいと思います。
- 風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などの症状がある人はあらかじめ治療をしておくことが重要です。
飛行中
その他
自己対処法
飛行機の中で耳が痛くなってしまったら・・
軽い場合は、水を飲む、アメなどをなめる、大きく口をあけたり閉じたりすることで症状が改善されることがあります。これで改善されない場合やにはスキューバダイビングで用いられる耳抜き（バルサルバ法）をためしてみてください。
耳抜きの方法：最初に鼻をかみます（この時、偶然治ることもあります）。次に鼻をつまんで空気を吸い込み、口を閉じて吸い込んだ息を耳へ送り込みます。これを耳が抜ける感じがするまで数回繰返します。（あまり強くやると鼓膜に傷をつけ、逆効果となりますので注意して下さい。）
効果のない場合、持参した鎮痛剤や血管収縮剤を含んだ点鼻薬（日本の航空会社では、機内に常備されている場合もあります）を使用します。
どの方法も効果がなく、飛行機を降りてからも症状が持続する場合は、耳鼻科を受診してください。
軽い場合は、水を飲む、アメなどをなめる、大きく口をあけたり閉じたりすることで症状が改善されることがあります。これで改善されない場合やにはスキューバダイビングで用いられる耳抜き（バルサルバ法）をためしてみてください。
耳抜きの方法：最初に鼻をかみます（この時、偶然治ることもあります）。次に鼻をつまんで空気を吸い込み、口を閉じて吸い込んだ息を耳へ送り込みます。これを耳が抜ける感じがするまで数回繰返します。（あまり強くやると鼓膜に傷をつけ、逆効果となりますので注意して下さい。）
効果のない場合、持参した鎮痛剤や血管収縮剤を含んだ点鼻薬（日本の航空会社では、機内に常備されている場合もあります）を使用します。
どの方法も効果がなく、飛行機を降りてからも症状が持続する場合は、耳鼻科を受診してください。
航空性中耳炎の治療（耳鼻科でできること）
航空性中耳炎になってしまって、治らない場合は、耳鼻科を受診しましょう。基本的な治療方針は通常の急性中耳炎と同じです。抗生剤、去痰剤、鎮痛剤の投与が一般的です。鼻の調子が悪いと中耳炎が治らないため、同時に鼻の治療も行います。